塩にまつわる知識

良質の塩

塩田時代の昭和18年において、当時大蔵省の役人であった時雨音羽はその著「塩と民族」で次のように指摘しています。

『塩と民族』時雨音羽著より

「塩の専売法が施行された明治38年から較べると塩はニガリを抜き精製されてきた。これを良質の塩としているが、自然に適した塩といえるか疑問である。味の点でもうまくない。要するに、水として安全な蒸 溜水に味がなく、混り物を含む泉の水がうまいのに似ている。少量のニガリは漬物にしても、味噌や醤油などの酵母菌を発生させるにも、是非必要である」

彼は自序の中で「人類の日常生活に一日も欠くことの出来ない塩、幾千年の遠い昔から人々と苦楽を共にしながら一向にその歴史や活躍の状態は知られていない。一合の酒にも唄や涙があるように、一握りの塩にも限りない歴史と物語があるのに」と嘆いています。

上司であった大蔵大臣 石渡荘太郎は次のような序を寄せています。
「時雨君は畑違いの詩人になったが、【出船の港】や【鉾をおさめて】があの省舎の中で作られたとは知らなかった。【塩と民族】もその時代から研究し心がけた著述であることを知って更に感を深くする。人類と塩とは切離せぬものであるに拘らず、殆んど知らぬ、識るにも適当な著書がない、と彼は言っているが、正しく左様である」

また、近年の塩の著書から、一節をご紹介します。

『生命にとって塩とは何か』京都大学農学部教授 高橋栄一著より

「体の約3分の2は水、体重60kgの人なら40kgが水分である。この40kgの内30kgは細胞の中に含まれ、のこり10kgは細胞の外にあって血管やリンパ管の中に流れたりしているが、この組織細胞の外側にある体液は、硬骨魚の体液と同じく海水の約3分の1の「塩類濃度」を保持している。"われは海の子"というのは単なる文学的表現にとどまるものではない」

『塩 あなたはまだ不安ですか』慶応大学医学部教授 加藤暎一著より

「海塩の味を知らない世代が増えている。食塩の問題ばかりでなく、私達の生活文化の体系が、経済性や効率性という健康や文化の本質から離れたところから歪められている」