日本伝統の発酵食品「味噌」の歴史や種類を分かりやすく解説!

1300年もの昔から、私たち日本人の食生活を支えてきた伝統の発酵食品「味噌」。その歴史や種類、健康効果など、知っていそうで知らない「味噌」について、わかりやすく説明します。

はじめに

朝起きると、台所からトントントンとまな板を叩く音が聞こえ、炊き上がったご飯のよい香りが漂ってくる。そんな昔ながらの日本の朝食に不可欠な名バイプレーヤーが「味噌」です。ところで、その「味噌」とは何なのでしょう?伝統の調味料、大豆から作る発酵食品、料理の「さしすせそ」の「そ」のこと…。いろいろ思い浮かびますが、いつ、どこで生まれ、どのように日本へ来たのか。またどんな種類があり、どのように作られているのかなど、まだまだ知らないことは数多くあります。そこで「味噌」と「塩」の関係をひもときながら、甘くも辛くもあり、奥深い旨味を感じる「味噌」の世界へ、ご招待いたします。


味噌の種類

〈もとの原料は穀物・麹菌・塩〉

「味噌」を作るのに必要な基本の材料は「穀物」「麹菌」「塩」の3つのみ。たったこれだけのシンプルな食材なのに、日本には千を超える種類の味噌が存在し、味もさまざま。なぜなら味噌づくりに不可欠な発酵・熟成は麹菌など微生物の働きによるもので、それは気候風土、土壌、水質などの条件によって変わり、培ってきた文化や習慣、味の嗜好によっても違ってくるから。好きなお味噌の種類で、その人が生まれ育った地域がわかる!というのも決して大袈裟なことではないのかもしれません。

〈麹による分類〉

「味噌」に使われる麹には、「米麹」「麦麹」「豆麹(大豆麹)」の3種類がありそれぞれ米や麦、大豆に麴菌をつけて繁殖させたものです。その麹の違いによって「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」に分かれます。
・米みそ…大豆に米麹を加えてつくります。全国で作られる味噌の約80%を占めます。
・麦みそ…大豆に麦麹を加えて作ったもの。九州、四国、中国地方が主な産地。
・豆みそ…大豆のみを原料としたもの。愛知、三重、岐阜の中京地方が主な産地。
※例外もあります。

〈味による分類〉

味噌は「甘口」「辛口」というように、味でも分類されます。辛さの加減は、塩の量と麹歩合(大豆に対する麹の比率)で決まるとされ、塩分が多いほど辛口になり、塩分が一定なら麹歩合が高いほど甘口になります。

〈色による分類〉

色の違いによっても、「赤みそ」「白みそ」「淡色みそ」に分類されます。原料が同じなのに色に差が出るのは、発酵・熟成中に起こるメイラード反応が原因。これは原料に含まれるアミノ酸が、糖と反応して褐色に変化することで、製品になってからも時間が経つと熟成が進み、色が濃くなっていきます。

〈味噌の塩分〉

大豆、麹とともに、重要な材料が「塩」です。味噌というと塩分の摂りすぎを心配する人もいますが、塩は決して悪物ではありません。味噌の貯蔵性を高めるための大切な存在で、塩分濃度が低すぎると味噌は腐ってしまいます。さらに発酵熟成させた味噌は、栄養価にも優れており、毎日の食事で上手に摂取したい食品です。

味噌の歴史

〈味噌の起源とは?〉

そもそも「味噌」はいつ頃、どこで誕生したのでしょうか。その歴史は、1300年以上前に遡ります。当時は調味料ではなく、贅沢な食品として食されたり、また薬としても珍重されていました。発祥地は中国とも、日本とも、諸説ありますが、古代中国の大豆塩蔵食品の「醤(しょう・ひしお)」を起源とする説が有力です。

〈味噌の原型は「醤」〉

「醤(しょう・ひしお)」とは塩漬けのこと。冷蔵庫のなかった古代は、肉や魚に塩や酒を混ぜて熟成させることで、腐敗を防いできました。肉を使用したものは「肉醤(ししびしお)」、魚を使用したものは「魚醤(ぎょしょう)」と呼ばれ、農耕生活が始まると、大豆や小麦などの穀物を塩漬けした「穀醤(こくびしお)」が誕生します。この「穀醤(こくびしお)」を潰して、ペースト状にしたものが味噌の原型といわれています。

〈名前の由来〉

味噌という名前の由来は、「醤」になる前の熟成途中のものがとても美味しかったので、これを未だ醤にならざるものということで「未醤(みしょう)」と名付けたそうです。その「みしょう」が→「みしょ」→「みそ」に変化したと考えられています。

〈中国誕生説〉

紀元前700年頃の中国の周王朝の古文書に「醤」が記されていたことから、味噌は中国で誕生し、飛鳥時代から奈良時代に遣隋使によって伝えられたというのが中国誕生説です。日本では、701年の大宝律令において初めて「未醤」という文字が記されています。

〈日本起源説〉

一方、縄文時代の遺跡跡からどんぐりを原料とした「縄文味噌」と呼ばれる食品があったことから、味噌は日本が起源という説もあります。縄文時代後期から弥生時代には穀物を塩蔵していた形跡も発見されており、日本独自の製法によって味噌造りが発展したのではないかとされています。高温多湿な日本の気候風土は、発酵食品を生み出すのに適しており、味噌が日本で生まれ、発展したという説も、意外に有力かもしれません。

日本における味噌の歴史と変遷

〈味噌は貴重で贅沢なもの〉

平安時代の味噌は、寺院や貴族階級で珍重されるような貴重な贅沢品でした。現代のように味噌汁として食されることは少なく、薬としても利用されていました。味噌汁として食されるようになったのは、「一汁一菜」という武士の食事習慣が確立した鎌倉時代のこと。室町時代になると大豆の生産量が増え、自家醸造も始まります。さらに江戸時代には手前味噌と言われるように庶民の間でも味噌造りが盛んになり、味噌を使った料理が一気に広まりました。

〈味噌の歴史年表〉

・平安時代…高級官僚の月給として味噌が支給されるほど高価で貴重なものだった。
・鎌倉時代…「粒みそ」をすりつぶした「すりみそ」が作られ、水に溶かして味噌汁として利用。鎌倉武士に「一汁一菜」の粗食が広まった。
・室町時代…大豆の生産量が増え、自家醸造が始まったことから、庶民の間にも味噌汁が浸透。この頃から「醤油」も広まった。
・戦国時代…戦国武将たちは米と味噌を兵糧として戦地に携帯。多くの武将たちが味噌づくりを奨励。信州、仙台、三河など戦国武将の出身地には味噌どころが多い。
・江戸時代…人口が50万人に達した江戸には全国各地の味噌が運ばれ、味噌屋は大繁盛。現代と変わらないほど、庶民にも味噌が広まった。

〈戦国武将と味噌〉

味噌は歴史と深く結びついていますが、中でも味噌の醸造技術が飛躍的に発展したのが戦国時代です。戦国武将にとって、食事は勝つための重要な要素。武士は1日約5合の米を食べていたとされ、その際のおかずとなったのが味噌です。信州や仙台、三河など強い武将がいるところが、味噌どころとなっているのも納得ですね。

〈味噌が戦国武将に好まれた理由は〉

・長期保存ができること。 ・味噌汁はもちろん、そのまま食べたり、つけたりもできる。 ・貴重なタンパク源であり、塩分補給になり、スタミナがつくだけでなく集中力も増す。 ・「汁かけ飯」などは野菜や魚介類が素早く食べられる ・質素倹約を奨励していた武士にとってちょうどいい食べ物。

〈織田信長と味噌〉

塩辛く、はっきりとした味が好きだった織田信長は、焼き味噌や大根の味噌漬けを好んで食べたそうです。公家風の上品な薄味料理を出された際には「不味い」と大激怒したというエピソードも。

〈豊臣秀吉と味噌〉

味噌で味付けした焼きダコが好物だった豊臣秀吉。百姓の出身で幼少期は貧しく、麦飯も食べられなかったため、天下人となった後も「山盛りの麦飯が一番のご馳走だ」と語っていたそうです。そのお供として味噌を食していたかもしれません。

〈徳川家康と味噌〉

健康に気を遣っていたとされる徳川家康は、「五菜三根」の味噌汁を常食とし、「よく噛む」ことを重要視したそうです。75歳まで生きた長寿の秘訣は、味噌汁にあったのかもしれません。

〈武田信玄と味噌〉

戦国最強と称された武田信玄は、信州味噌の基盤を作ったとされます。上杉謙信との戦いでは、街道筋の農民たちに大豆の栽培と味噌づくりを奨励。出来上がった味噌を買い取りながら軍を進めたともいわれています。
◎信玄が発明し、強さの秘密とされたのが「陣立味噌」です。煮大豆をすりつぶして塩と麹を加えて団子状にしたものを、出陣の際に袋に入れて腰に吊るして出発。歩いている間に発酵が進み、戦場に着く頃に味噌が完成するという仕組みで、戦場食として重宝されました。

〈伊達政宗と味噌〉

伊達政宗は料理好きで、大豆を好んでよく食べたそうです。仙台青葉城下に「御塩噌蔵(ごえんそぐら)」という日本初の味噌工場を建設。伊達家の味噌は、真夏でも腐らず日持ちしたことから、仙台味噌は一躍脚光を浴びたそうです。

日本全国の郷土味噌

〈故郷の味として親しまれる郷土味噌〉

日本全国それぞれの地域で、気候風土にあったさまざまな味噌が作られています。そんなご当地味噌をご紹介します。

●北海道味噌 (中辛口・米味噌・赤)北海道
さっぱりとしたクセのない味わい。北海道開拓時代に全国から多くの人が移住してきたため、皆の口に合う味噌になったとか。味噌ラーメンも北海道が発祥だそうです。

●津軽味噌(辛口・米味噌・赤)青森
津軽地方では、昔から飢饉に備え長期保存できる味噌作りが盛んでした。「津軽三年味噌」は塩分が高く辛口ながら、長期醸造で塩なれしており口あたりは意外にまろやかです。

●秋田味噌(辛口・米味噌・赤)秋田
米どころ秋田の味噌は、米から作る麹を多用。辛口でありながら自然な甘みもしっかり感じられます。

●仙台味噌(辛口・米味噌・赤)宮城
伊達政宗の時代から伝わる製法を大切にした、伝統的な長期熟成味噌。

●会津味噌(辛口・米味噌・赤)福島
自然環境が厳しい会津盆地で生まれた長期熟成味噌。300年以上の歴史があります。

●越後味噌(辛口・米味噌・赤)新潟
米どころ新潟県の辛口味噌。米麹に精白した丸米を使っていて、米粒が味噌の中に浮いているように見えることから「浮き麹味噌」と呼ばれることも。塩味の中にすっきりとした麹の甘みを感じます。

●佐渡味噌(中辛口・米味噌・赤)新潟
麹が多く使われていて、長期熟成させるため塩慣れしたコクの深い旨みを感じます。

●信州味噌(辛口・米味噌・淡色)長野
日本の味噌生産量の約40%を占める、日本を代表する味噌。香りにやや酸味があり、すっきりとした旨味が特徴。武田信玄の時代に大豆の栽培が盛んに行われ、全国に広まりました。

●加賀味噌(辛口・米味噌・赤)石川
伊達政宗の時代から伝わる製法を大切にした、伝統的な長期熟成味噌。加賀前田藩の兵糧として伝わった、塩分が高い長期熟成型味噌。キリッとした辛味と深いコクがあり、色は淡めです。

●江戸甘味噌(甘口・米味噌・赤)東京
蒸した大豆を用いるため色は濃い赤褐色。米麹をたっぷり使用しているため濃厚な甘味と光沢があります。関東地方は気候に恵まれているため味噌の使用頻度は、冷寒地ほど高くありません。

●東海豆味噌(辛口・豆味噌・赤褐色)愛知、三重、岐阜
名古屋味噌、三河味噌、三州味噌、八丁味噌などと呼ばれ、中京地方を中心に製造されている豆味噌。濃厚な旨味と渋味に、わずかな苦味も。八丁味噌は、もともと岡崎城から八丁(約870m)の範囲内で製造されていた味噌のことをいいます。

●関西白味噌(甘口・米味噌・白)京都、大阪
「西京味噌」としても知られ、主に京都で作られている甘味噌。皮を取り除いて煮た大豆と精米度の高い米を用いるため色は白や上品な黄金色。色がつかないようにするため空気との接触を絶って熟成発酵させます。米麹の割合が高く、強い甘味が特徴。

●府中味噌(甘口・米味噌・白)広島
皮を取り除いた大豆を原料とした白やクリーム色の甘味噌。きめ細やかで豊かな風味とコクで好まれ、関西白味噌と並ぶ白色甘味噌の代表格。

●讃岐味噌(甘口・米味噌・白)香川
濃厚な甘味のある豊かな風味は、京都の白味噌や広島の府中味噌と並ぶ人気の白甘味噌。

●御膳味噌(甘口・米味噌・赤)徳島
蜂須賀公の御膳に供されたのが名前の由来。塩分は辛口味噌と変わりませんが、麹の割合が高く、豊かな旨味を感じます。

●瀬戸内麦味噌(甘口・麦味噌・淡色)愛媛、山口、広島
米味噌圏と麦味噌圏が交差する地で好まれる麦味噌。特に愛媛で作られる麦味噌は、麹の割合が高く、麦独特の芳香と軽やかな甘みがあります。

●薩摩味噌(甘口・麦味噌・淡色〜淡赤色)鹿児島
麦味噌の中でも比較的短い熟成期間で作られ、淡い色をしています。麦麹の独特の香りが強く、麦麹の粒が残っているのが特徴です。

●九州麦味噌(甘口・麦味噌・淡色〜淡赤色)福岡、鹿児島
麦味噌が主流の九州で主に作られている味噌。麦麹の割合が高く、塩分はやや低め。強い甘味と、独自の香りがあります。甘口が多いですが、北部では辛口もあり、現在では麦麹に米麹を混ぜた「合わせ味噌」の生産も増加中とか。

味噌と健康

〈味噌の健康パワー!〉

味噌の主原料である「大豆」は、“畑の肉”といわれるほど良質なタンパク質を豊富に含みます。その「大豆」を発酵させてつくる「味噌」は、大豆以上に栄養価が高く、パワーあふれる健康食品です。発酵の過程でアミノ酸やビタミンなどが多く生成され、生命維持に不可欠とされる必須アミノ酸は、9種類がすべて含まれています。その他にも、炭水化物、脂質、ビタミン、カリウム、マグネシウム、食物繊維も含まれ、1つの食品でこれほど多くの栄養を含むものは他にはないといわれるほどです。

〈味噌の健康効果〉

昔から「味噌は医者いらず」ということわざがありますが、近年、味噌の研究が進み、栄養学や医学の面からも多くの期待を集めています。
◎味噌汁でガンのリスクを下げる
味噌汁と乳がんとの関係は、研究成果が発表されており、「味噌汁の摂取が多いほど乳がんになりにくい」という調査結果が発表されています(厚生労働省研究班2003年)。また、味噌の塩分は胃がんを促進しないということも報告(広島大学2006年)されています。喫煙者が毎日味噌汁を飲むことで胃がんの発生リスクを下げる(国立がんセンター1981年)ともいわれています。
◎味噌は生活習慣病のリスクを下げる
味噌は脳卒中や認知症、心臓疾患などの発症を低下させる(大妻女子大1994年)ともいわれています。また味噌には血圧低下作用をもつ物質がある(食品総合研究所1993年)とされ、高血圧予防も期待できます。

味噌にまつわるエトセトラ

〈毎月30日はみその日〉

毎月「みその日」があるのをご存知ですか?月の最終日を「晦日(みそか)」と呼ぶことから、毎月30日が「みその日」です。日本の伝統的な食文化の継承と発展を目的とする全国味噌工業協同組合連合会によって1982年に制定されたもので、全国の味噌メーカーを中心にイベントが展開されています。

〈味噌を使ったことわざ〉

昔からいい伝わることわざや慣用句にも、味噌に関する言葉が多くあります。そのいくつかをご紹介します。
◎「味噌汁は朝の毒消」栄養価の高い味噌汁を朝飲むことで、体の毒を出して、体調が整うという意味。
◎「手前味噌」自分で自分を褒めること。
  手前とは自家製のことで、江戸自体には自分で作ったお味噌の美味しさを自慢しあっていたようです。
◎「味噌汁は一杯三里の力」1里は約4km。1杯の味噌汁には、12km歩ける栄養が詰まっているという意味。
◎「生味噌は腹の妙薬」良い味噌は消化薬にもなるという意味。酵母や乳酸菌により腸内環境が整えられます。
◎「味噌は七色の妙薬」味噌の使い方はまさに七色。いろいろ使えて、いろんな味を出せるということ。
◎「味噌の医者殺し」味噌をたべていれば健康で医者にかかることはないので、商売上がったりという意味。